われらはみな愚か

http://www.mot-art-museum.jp/top.htm
映画からの帰路、一人で電車に乗っていて、情報誌を眺めてると、ふと衝動的に行きたくなったので、門前仲町で下車して、乗り換え。1年振りに行ってみた。
 お目当ては特別展示のルオー展と常設展示のナム=ジュン・パイクの特集。場所的に駅からはちと歩かにゃならんのが、玉に瑕だけど、ここいらは下町情緒があって、とても良い。
 道端で椅子に座って植木の剪定をしているお爺さんやら、30年くらい風景が変わってないであろう商店街で馴染みのお客さんと会話してるお店のおばちゃんとかを見ると、なんかほっこりする。江東区もマンションが増えてきたらしいので、そういう雰囲気も薄れていくんだろうけど、まあ、そこは他所者故の架空のノスタルジアというやつだ。
 で、館内へ入って、早速、特別展示へGo!!邪道な鑑賞方法だけど、iPod武装し周囲の人々の会話や雑音をシャットアウトして、完全に一人の世界になって突入。伊達に5000曲以上のマイ・コレクションからの選りすぐりが入っているわけでは無いので、作品を見て感じて、そのまま曲を選んで聴くといったちょっとした贅沢。
 ルオーの絵画を生で見るのは初めてだったんだけど、ステンドグラス職人の出自からなのか太い輪郭線、どこか、くぐもった陰りのある色彩、それに人の表情に滲み出る醜悪さ、悲哀、憂いを炙り出すのは見事に尽きる。
 サーカス小屋の団員とその家族、諦念の表情を見せる裁判官、醜い紳士淑女、市井の人々、どれも生きる上で不可避な業故の陰影を見事に表現していて、荘厳さや華美さからは程遠いけど、代表作と呼ばれる作品はやっぱ素晴らしい。
 でもね、一番、ぶっ飛んだのは「ミセレーレ」の一連の版画だわ。正直、他の作品も、これに比べると印象が薄い。期間毎に入れ替えをしているので、全ては見れなくて、今回は「戦争」だったけど、それでも満腹。グルっと回って、気になったので、もういっぺん一つ一つ凝視してしまった、うーん、もう肝をグッと掴まれるような迫力がある。
 第一次世界大戦を契機に取り掛かったそうなんだけど、歴史が初めて経験した世界大戦、直接的な戦闘地域でなくとも、都市部を中心に真綿で首を絞められるように重苦しい空気が漂い始める集合的無意識。戦争は経験したことも無いし、これからも願わくば経験したくは無いけど、同時代性の怨念というか、気が凄まじい作品群だわな、こりゃ(^^;。
 ベタでスマソだけど、この間は延々とNINのFragileとボウイ先生のベルリン三部作とイーノ先生、フィリップ導師を聴いてました(w。
 あ、この単純ナル野郎と石を投げないで!!(^^;。
 そうそう無学なので石版画には、余り関心は無かったんだけど、ちょっと興味を持ったなあ、版画って素材によって、こうも質感が変わるのか、と。
 そして、閉館時間も後、1時間程になったところで後ろ髪惹かれつつ、常設展示へ。自分でも何で惹かれるのか説明が未だに出来ない白髪一雄の作品に、また悔しいながらも、やっぱり魅入られる。ふむ、どうみても、ガキんちょが学校の美術の時間が終わった後に水道を流して、パレットを洗いながら絵の具で遊んでるようなのにしか見えんのだけど、なんで、いつもいつも、どこの美術館でも、たまたま見ちゃって、後で猛烈に記憶に残ってしまうんだろうか・・・。
 お次は、サム・フランシスの莫迦デカいペインティングが四方を取り囲む部屋でベンチに座って、グルッと一周。もともとボーっとして空想に耽るのが大好きなMr.一人っ子なだけあって、こんなオカズがあったら、何時間あっても足らん(^^;。赤と青と黄が飛び交うだけ(w、の絵なんだけど、飽きない。
 でもって、ナム=ジュン・パイクの特集。ふーみゅ、物足りない・・・。初公開のオブジェには余り、気持ちが動かなかった、残念。ビデオ映像が絡まないと、漏れにはちと退屈なのかな?
 そうしてるうちに閉館時間が差し迫って来たので、常設展示のオーラスの宮島達男の夥しい数のデジタルカウンター。不規則、且つ、カウントされる数字の速さもバラバラで意味無く楽しい。これも空想のオカズには、うってつけなのだが、ホントに閉館間際になったので退散。
 久々に美術館に行ったけど、やっぱワクワクするなあ。映画とのコンボだったので、充足感アリアリな一日だった(^^)。次はお昼辺りから、ゆっくりと時間を取って行こ♪