Scissor Sisters 「Scissor Sisters」(ISBN:B0001WGE48)

断言します、本年度最強のニューカマーの1stアルバムです。いやね、ホラ、フロイドのカバーをリリースした時は原曲とアレンジの妙で実際は大したこたあない、と思ってました。板さんが今週の一曲で掛けて聴いた瞬間に脱帽です。
 まったくRaptureといい、新人バンドなんて紹介に騙されるが、こういうアレンジ玄人で引き出しの多い連中のデビューは嬉しい限りです。
 メディアでは70年代のエルトン・’ドーリィ’・ジョンやらボウイ先生を彷彿と紹介されてます。なんだよ、レトロバンドかよと思いきや、アルバム中盤以降の80年代エレポップ、90年代ブレイクビーツとリズムへの取り組みというかアレンジのセンスが抜群です。
 要約すると、70〜90年代までのダンサンブルでファンキィだったUKロックのエッセンスが詰まってます。
 え?UKロックなんてメロディだけやん!、2chでクソミソに叩かれとるやん、と思われているかもしれないけど、それは半分ウソで半分はホントです。
 R&Bに憧れて初期はカバーしていたビートルズストーンズはどうでしょうか。リンゴのスッタン・スッタンなリズムはともかくとしても「Tommorow Never Knows」なんてサンプリング+ブレイクビーツじゃないですか。キースとチャーリィのリズムがストーンズの核ですよね。ファンキィでヘヴィでグルーヴィと言えばZEPでしょ。ボウイ先生のプラスティック・ソウルなファンクミュージックは?プログレのひんまがった変拍子は?ジョイ・ディヴィジョンの冷徹なビートは?といくらでも反論の例証が出来るわけです。ローゼスとハピマンによるマンチェ・ブームからクーラシェイカーへのグルーヴィな系譜を最後に、国粋主義なブリット・ポップからの派生でメロディ至上主義なイギリス演歌とリズム至上主義なフロア組に二極分割してしまったように思います。最近は揺り戻しが来たような気もするけどね。
 そういう意味ではレディヘは傍流なんですよね。フォロワーのバンドが次々と演歌なシング・アロング大合唱なバンドになっていくからなあ。どこがロックンロールなんだか、さっぱり判らん。んなに唄いたいなら、カラオケで唄って寝とけって感じです。
 で本題に戻すと、レトロな印象を受けがちな由縁は生ドラムのスネアの録音が、いかにもマイクとトラック数が少な目風になっていることに加えて、サックスや鍵盤といった楽器がふんだんに使われているので70年代っぽいアレンジに聴こえてしまうせいでしょう。
 ところで今や、ディナーショー・ソングしか唄ってないけど、なにやら大物らしいってな世間の印象なエルトン・’ドーリィ’・ジョンですが、デビュー時の楽曲は凄くシアトリカルで躍動感溢れた優秀なのが多かったんです。若人諸君には信じられないかもしれません、私も追体験組ですからね。