Beastie Boys 「To the 5 Boroughs」(ISBN:B00021LRWM)

正直、リリース前は凄く不安だったんだわ。「Hello Nasty」(ISBN:B000007TE8)からの6年間の空白期間が良くなかった。
 プロディジーとのフェスでのいざこざやグランドロイヤルの閉鎖、仏教や環境問題、チベットへの傾倒といった、ある種ネガティブな話題しかなかったもんなあ。
 特にプロディジーとの抗争はヤバかった。ファンとしては裸の姉ちゃん檻に入れてた連中がさ、改心するのは良いとしても説教というかご注進すんのはどうよ?って思ったもん。
 また表現者が特定の宗教的な思想に傾倒するのは、ありがちな陥穽の罠です。殿下の変貌とかが良い結果(または作品)に帰結したとは思えん。ビートルズだって危うかったしね。
 でもってアルバムなんですが、嬉しいことに予想を覆してくれました。80年代とか原点回帰とか喧伝されてますが、眉唾だな。オールドスクール’風’なとこは各トラックに滲み出てるけど、結局はポップミュージックの時代性は機材とミキシングの組み合わせが空気を醸造する割合が高いので、仮に昔の機材を使ったところで再現出来ない場合が多いもん。それをいうなら今作にしても90年代’風’のブレイクビーツだってあるわけですしね。
 ここ数年のシーンの80年代回帰に何でも符号させるのも如何なもんかいな。
 1曲目の「Ch-Check It Out」から一気に全15曲を40分程度で聴き終えることが出来て小気味良い、テンポ良い、ダレ場無しです。前作から既にスタイルとして新しさを提示することは無くなりましたが、まだまだ枯れちゃいません。
 今や白人絶叫型パンクなライムのグループラッパーが彼らしか居ないのですが、大傑作「Check Your Head」(ISBN:B000002V1I)で脳天撃ちぬかれた人間としては久々の前線復帰は嬉しい限りです。